ブーム 1

この研究室はその時の流れでブームが生まれる。

これまで流行したブームの中から興味深いものを順に紹介していきたい。

 

最近は細胞数の計測が流行った。

その発端は、細胞数が酵素活性に影響を及ぼすからということだが、

実験結果が一定しない理由を追い求めてもはっきりせず、

最終的に細胞数が犯人に仕立てられた格好とも言える。

 

細胞の計測は、まず教員が細胞を準備し、

号令がかかったら順に数えてその数を報告する。

その後、学生全員の結果を見て評価が下される。

3回目の結果、これまで以上にばらつきが見られ、教員が辛辣なコメントを出した。

細胞数を揃えることは実験上重要なことに違いないが、この系には大きな問題がある。

一つ目は、顕微鏡が一つしかないために全員が揃って計測できず、

場合によっては講義等が入って最初と最後の計測で数時間の差が生じる。

その間、細胞は37℃で静置されているので、増殖しないとも限らないことだ。

二つ目は、学生全員の中央値を基準に議論しているが、

先輩が後輩に教え、後輩がそのまた後輩に教えている状況では、

中央値が必ずしも正しい値とは限らない。

なぜ教員が計測した値を示し、それを基準としないのか。

三つ目は、学生全員が満足いく値だったらいいが、

満足できなかった場合、これまでの結果をどうするのか決めていないことだ。

結局、3回目の後に4回目が行われてばらつきが少し減ったから、

3回目の結果はなかったことのようになったが、

「過去最悪」、「どんどん悪くなっている」と評されても

教員にとってこれまでの都合が良い結果を見直すことはないのである。

 

そして、このブームは2ヶ月ぐらいで終わりを告げた。