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細胞を培養するとき、培地と呼ばれる液体にウシの胎児由来の血清を加える。

血清は、ウシ由来であることから個体によって成分が異なり、

1本500 mLで4万円前後と高価であることから、失敗できない買い物である。

そのため、飼っている細胞に合うかどうか、購入前にロットチェックを行う。

ロットチェックは、ロットチェック用の血清を添加した培地でしばらく培養し、

細胞の増殖曲線を描くことが一般的だと思うが、

今回は「細胞を回収して可溶化しタンパク質の濃度を測定して比較する」という

方法を准教授が提案した。

その結果、検討した2つのロットには特に大きな違いはなかったのはいいのだが、

実際の購入に際して、奇妙なことを言い出した。

「検討した2つのロットを同数買って、混ぜて使います」

培養細胞を扱っている研究室は、大学や企業の中に何百とあるだろうが、

このように血清を混ぜて培養する研究室は滅多にない、

いや、業者も首をかしげるぐらいだから、うちの研究室だけかもしれない。

疑問に思う研究室員もいるようだけど、意見したところで聞く耳を持つわけなく、

無駄なことはしないと決め込んでいるようである。