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「*(アスタリスク)」は、研究をしている人間にとって非常に重要な意味を持つ。

グラフに付くか、付かないか。

統計処理の結果に一喜一憂してしまう。

この研究室では、「*」は自身の研究の方向性を決める以上の効力を発揮する。

「*」の付いた結果を出せば評価が上向き、連発するとVIP待遇となる。

逆に、「*」が付かない結果や、付いたり付かなかったりする結果を出すと、

実験下手のレッテルが貼られ、場合によっては罵声が飛ぶ。

「なぜ有意差がないんだ!」

付かない結果を付けるには捏造しかないのだが。

 

化合物のスクリーニングを担当する場合は注意が必要になってくる。

やればやるだけ結果は出るし、図は作れる。

しかし、与えられた化合物に効果があるかは運次第である。

この運には、指導教員の選択眼を含め、誰が指導教員になるかも含まれる。

効果がある化合物の構造を比較するのは当然だが、

効果がなかった化合物同士、また効果がなかった化合物とあった化合物の比較も行い、

得られた結果を単なる心情的な実験者の評価基準にするのではなく、

科学的に有効利用してほしいものである。