留学生

うちの大学は、歴史的な背景土地柄もあり、他大学とは異なる特有な学部や研究センターを有する。また、最近の博士進学事情や文部科学省の政策を背景に、留学生がキャンパス内に多く見られる。

そのため学部内もそうだし、うちの研究室にも2、3年に一度ぐらいアジアやアフリカからの留学生が籍を置く。期間としては、一年間ぐらいだろうか。

実際のところ、留学生が来て大変なのは、教員よりも学生の方である。

まず、来学してくる初日、主要ターミナル駅まで迎えに行かなければならない。「年が近ければ話題に困らないだろう」と教員は安易に考えてくれるが、どんな年代だって合う・合わないはあるし、英語が第二外国語である者同士でどこまで通じるか知りようもない。

大学に到着してからは手続きが山ほどあり、やっと解放されたかと思うと、研究室のディスカッションで別の緊張をしなければならない(こんな日でさえ免除されないのがうちの研究室である)。

翌日以降は、事細かい、そして理解し難い研究室のルールを英語で説明していくのだが、有り難いことに留学してくる留学生は概して頭が良く、空気を読んで察してくれることが多い。

そして、ばたばたしながらも1、2ヶ月は何とか過ぎていく。問題はそれ以降で、なぜか留学生と教授の間に不穏な空気が流れることが常である。噂によると、前職のときに海外からの研究員が問題を起こし、対応に苦労したらしい。ただ、それは噂であるし、留学生には全く関係ない話なので、留学生が話に行くのを怖がるような態度は改めてほしいのだが、一度スイッチが入ったら加速するのみなのである。

留学の経験があるから英語コンプレックスではないだろうが、終わりの方はほとんど会話がなくなり、しまいには実験を早々に切り上げさせるのである。実験に慣れてきて、最後まで結果を出したいと思う留学生にとっては酷な仕打ちとなる。

この打ち切り令が出されたら最後で、サポート役の学生が教授に意見することはできないし、他の教員も見て見ぬ振りを決め込む。

留学生が嫌いなら研究室に配属させなければいいのに、最悪な印象を植え付けて帰国させるのだから、あらゆる面でマイナスに感じる。

それでも大学における評価は、教授が指導教官となり、大学が公表している年度別の業績リストの「教育活動その他」の欄に「留学生受入 1名」と明記される。学部または大学が書き込んだものなら形式上仕方ない点もあるが、本人によるものならどういう気持ちで入力したのだろう。