24 -TWENTY FOUR-
「事件はリアルタイムで起こっている」というナレーションで始まる海外ドラマが人気を博し、ドラマの途中や最後で鳴る秒針の音が事件の緊迫感をより表現していた。
1シーズンが24時間。
そう、24時間と言えば、うちの研究室のルールにもあり、メールの返信を24時間内にしないと『24』さながら研究室に緊張感が走るのである。
たしかに、教授の返信は早い。「依存症ではないか?」と疑わせるレベルである。ただ、周りにもその症状を伝播させないでほしいのだが、研究室の王様は許さない。しかも、ルール上は「24時間以内」とあるのに、直ぐに返信が来ないと「イライラしてくる」と公言するのだから、最優先せざるを得ない。
一方、准教授のメールには「ピペットマンの整理をするので、現在の配布状況が記載されているワードファイルを正午までに送ってください」等といったように期日を指定し、24時間もない場合がほとんどである。相手の事情なんて眼中にないのである。
ここまでならルールに厳しく物事を迅速に進めたい研究室とも思えなくもないのであるが、相手には返信を要求するものの、都合が悪くなると自分はスルーするから学生間で不満が募るのである。
ある年、修士で出ていく先輩が卒論をチェックするよう准教授から突然言われた。年度末は、修論を仕上げ、研究室の片付けばかりでなく、新社会人になるに伴い自身の引越等もあるのだから、急に言われても難しい。しかも、ずっと一緒にやってきた後輩の卒論なのだから、おざなりに見るわけにはいかない。
そんな葛藤もあり、「事前に予定を組込んでいただかないと、十分な時間が取れずに厳しい状況です」とメールを送った。
それでも再度お願いされるのか、それとも状況を加味して人数を減らしてお願いされるのか、気を揉んで待っていた。『24』のジャック・バウアーの台詞を借りるとすれば「今日は今までで一番長い日になる。(”This is the longest day of my life.”)」といった心境だったに違いない。
そんな先輩の思いとは裏腹にその日准教授からのメールはなく、返事を待ちながら先輩は卒業していったのだった。