10周年
教授がその研究室に赴任して10年経つと、
10周年記念として歴代のメンバーをよんでお祝いをするのが一般的らしい。
ただ、一般的な常識を打ち破るのがうちの研究室である。
教授がこの大学の教員になって11年目になるのに、
お祝いの「お」の字も出なかった。
卒業した先輩から数ヶ月前に「どうするの?」と連絡がきたけれど、
研究室内ではそんな話は全くないし、
デリカシーが抜け落ちている准教授は気にも留めていない様子なので、
「わかりません」と返信するのが精一杯。
教授の人徳から察すると、
卒業して他県に行った先輩がわざわざ駆けつけるとは思えないし、
散々苦しめられた先輩に至っては、あえてドタキャンをしそうで恐ろしい。
新型コロナウイルスのせいで会食の禁止
というお達しがきているからカムフラージュになっていいのかも。
折角の祝賀会がコロナ禍で流れてしまった可哀想な教授を
アピールできる。
外の目ばかりを気にする教授だから、これで問題なし。
あー、早く卒業したーい。