セミナー 2

細かいルールに従ってセミナーを迎えたとしても、それで終わりではないのがうちの研究室である。セミナー中はセミナー中のルールが、セミナー後はセミナー後のルールが存在する。

 

論文の紹介は、まず座長のタイトルの音読から始まる。英語だからといって、この音読で詰まってはいけなく、滑らかに言えるよう事前の練習が求められる。

それから、発表者が背景や目的等を紹介していき、実験材料や方法を含めた結果について、そして考察を終えたら、質疑応答の時間になる。そこまで済み、最後にこの論文に対する寸評を述べてセミナー中の役目を終える。

しかし、学生からの質問が5人以上出ないと質疑応答が延々と続くのである。15人程度在籍している研究室では、5人というのは多くも少なくもない数字かもしれないが、15人が全員揃うというのは稀であり、就活中や実務実習中であれば必然的に欠席となるし、「病弱体質」で紹介した通り気だるさを覚えたら休む先輩も多い。

しかも、冒頭の背景や目的を紹介している途中に、教員たちは容赦なく質問する。説明の途中で質問されると人によっては頭が真っ白になってしまうし、しなければならない5人の質問を奪いかねない。当初、助教「質問は年齢順で」と言ったものの、そんな発言はなかったことになっているし、説明途中の質問なしというルールを勝ち取ったのだが、しばらくしてごねられ、結局、実験結果に入る前に短い質疑応答の時間を入れることとなった。ルールというのは、上が好きなようにするためだけにある。

寸評を終わり、ホッとできるのはその日ぐらいである。翌日から調べものをしなければならない。質疑応答で出た質問に対して、3日以内に詳しい解説を書いてメーリングリストで流す必要があるのである。たしかに、質疑応答でわからなかった箇所を調べることは大切なことである。ただ、メーリングリストで流した内容は放置であり、合っていようが、間違っていようが指示者の無反応が相場である。ルールに従わせることだけを主目的としている感じが堪らない。

 

それでもセミナーは勉強になる。先輩方の発表はしっかりしているし、実験量や結果と雑誌のレベルの相関がわかるからである。

教授もよく「こんな結果でこれに載るのなら、うちの結果でも直ぐに出せそうだ」と宣う。はじめは研究室のデータ量に鼻高々だったが、この台詞が戯言だと知ると自らの卒論や修論の心配をせざるを得ないのである。

「教授、仰られてから2年以上経ちますが、全く論文が出ておりませぬ…」