本気

ポストドクター等一万人支援計画(別名ポスドク一万人計画は、2000年度に終了した文部科学省が策定した5年計画の施策であるが、これにより博士課程または博士後期課程を修了して学位を得たにもかかわらず、正規の職に付けていないポスドク問題」が生じている。

その昔、尊敬の念を込めて言われていた「末は博士か大臣か」という言葉は、今となっては死語であり、自虐的に言うことさえあるようだ(他方の大臣の評価が低くなったせいもあるとは思うが)。

 

長い年月をかけ、苦労に苦労を重ねて学位をとったとしても、うちの研究室のように教員同士の仲が悪く、自身の研究ができず上から理不尽な要求が降ってくるような大学教員になろうと思えるわけがない。

しかしながら、この状況を知ることになるのは研究室に配属されてから数ヶ月は要するので、研究への期待を持って所属した当初の面談では「博士課程への進学も考えています」と告げる先輩が多かったようだ。

 

博士課程に行くということは、学費という経済的な問題もあるし、社会へ出るまでの時間的な問題もある。単純に考えれば、大学の4年間に加え、修士課程が2年間、博士課程が3年間だから、大学卒業後計5年間も通わなくてはならない。

同級生が働き出し、結婚や出産の話も聞こえてくる中、5年間黙々と実験に明け暮れなければならない、というのは正直きつい。

しかし、5年間から4年間に短縮する方法がある。

それは、学位申請に必要な英語の投稿論文をインパクトファクターが高い雑誌に載せることである。規定以上のインパクトファクターの雑誌に受理されれば、博士課程2年間で修了できる。

これに目を付け、博士課程に進学させようとしたのが、うちの教授である。

「私達が本気を出せば2年で修了できますよ」という文句で博士課程への進学を勧めていたのだ。

うっかり騙された先輩方は、「早く本気を出してくれよ」と嘆いたのは言うまでもない。

教授がこの研究室に来て早9年。その間、博士課程を2年間で終えるだけのインパクトファクターを持つ雑誌に論文を出せていない。未だ本気を出していないのか、それとも本気を出してもそれだけの指導力がないのか。